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ダブルニッケルについて

 投稿者:かっ!  投稿日:2008年 5月25日(日)22時47分26秒
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  さて、今日は普段封印しているエンジニアリングの話をすこし。

薀蓄ですが・・・・・まず得意分野から。

エンブレムは装飾めっきの最高峰といっていいと思います。
外観、耐食性、コスト、あらゆる面で装飾の必要とされるパフォーマンスを全て満たしている、
まさしく装飾めっきの最高峰、到達点です。夢の金属といってもいいです。錬金術です。
下地がプラスチックのエンブレムは、軽量で安価であります。
その上に乗る光沢ニッケルは美しい外観をもたらし、
さらに耐食性ニッケルは十年経過しても変わらない輝きをもたらしてくれます。
そして、このニッケルめっきには欠かすことの出来ない考え、「ダブルニッケル」が存在します。

装飾ニッケルは、今でこそ銅ニッケルクロムですが、もともとはニッケルの単層めっきでした。
鉄素材の上にニッケルが乗っていたわけですが、薄い膜厚のめっきには素地まで貫くピンホール
が出来てしまいます。そこでニッケルと鉄との間で局部電池が形成され、腐食を加速します。
これを防ぐには、ピンホールを埋めるほどの膜厚を乗せなければなりませんでした。

そこで考え出されたのが、ダブルニッケルという考えです。
光沢ニッケルの下にもう一層の半光沢ニッケルを施すというものです。
これには「電位」という論理が必要であります。

金属は、イオン化傾向の強いものから、「k>Ca>Na>.....Ag>Pt>Au」と続いています。
金やプラチナはイオン化傾向が弱く、これらを貴金属といいます。これは一般的です。
これとは逆に、イオン化傾向の強いカリウムやカルシウムは、卑金属という言い方をします。
ニッケルの前後でこれを見ると、Fe>Ni>Sn、となります。
これは、鉄はニッケルより電位的に卑で、スズはニッケルより電位的に貴という言い方になります。
鉄とスズを比べるとスズは貴金属で、比較的さびにくい。これが電位の考え方の基本です。
電位が貴の金属のほうが錆びにくいわけです。

さて、実は同じニッケルにしても、金属に含まれる不純物によって電位が卑になったり貴になったりします。
ニッケルに関してそれは、電析皮膜中に含まれる炭素と硫黄の比率で決定します。
硫黄がより含まれるほうが卑になり、炭素がより含まれるほうが貴になります。
これこそ、めっき液中に加える添加剤によってコントロールされるわけですが、
半光沢ニッケルと光沢ニッケルではこのコントロールにより、電位的には光沢>半光沢であります。
すなわち、光沢ニッケルのほうがさびやすいわけです。
ここで腐食が起こると、例え腐食が半光沢ニッケルまで到達しても、
光沢ニッケルが優先的に腐食し、内部への浸食を食い止めてくれます。
このダブルニッケルの考えによって、耐食性は大きく向上しました。

今日では、半光沢と光沢の間にさらに卑なニッケル(トリストライク)を施す三重ニッケル、
さらに光沢ニッケルの上に非伝導性粒子を共析させる四重ニッケルがあります。
某A社はこの四重ニッケルを規格としていますが、
某B社はトリストライクを除いたものを規格としています。

さらに、半光沢下の銅めっきはレベリング・柔軟性・電位などで優れており、
また最上部に乗るクロムめっきは素晴らしい耐食性をもたらしています。
これら何層もの多相めっきによってエンブレムはその地位を確立したのです。
その元となっているのは、ダブルニッケルの考えに他なりません。

また、ダブルニッケルには、内部応力の修正という役割もあります。
内部応力とは、素地と電析層の物理的なストレスによって生ずるもので、
めっきが素地ごと反ったり、張ったりする現象です。
光沢ニッケルはレベラーの影響により引きの応力となります。
半光沢ニッケルにこれとは逆の内部応力を持たせることで、
これらの力の相殺により、応力のないめっき皮膜を可能にしているのです。
 
 
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